道路防災エキスパートDisaster prevention expert for road

道路防災エキスパート

道路防災エキスパートとは(制度の設立目的)

道路に関わる災害が発生、または発生の恐れがある場合、被害拡大を抑える、または未然防止のため、一刻も早く道路管理施設や公共土木施設の現況(損傷状況)把握を行うことが重要です。

しかしながら、特に大規模災害の発生時には、道路交通網や通信手段が寸断され、情報収集にあたる人員の不足が懸念されます。

このような際、道路管理について専門的な知識を有し、道路情報の迅速な収集・通報の支援活動を自主的あるいは要請を受けてボランティアで行うのが「道路防災エキスパート制度」です。

加えて、平常時には、このような災害発生時の迅速・円滑な対応に向けて各地域で定期的に「道路防災エキスパート連携会議」を開催し、また、「道路防災エキスパート講習会」や防災訓練等への積極的な参加により、道路防災に関する最新情報・知識の習得、自己研鑽に努めています。

さらに近年では、道路防災エキスパートのもつ豊富な経験とノウハウを次世代に伝えるため、各地域で「道路防災エキスパート講座」を開催する等、技術の伝承にも積極的に取り組んでいます。

当センターでは、これら災害時・平常時一連の活動を円滑かつ安全に進めるための事務局運営を担当しています。

道路防災エキスパートの活動内容



想定する災害 おもな活動内容
土砂
災害
  • ・土砂崩落又は崩落の危険性
  • ・路肩崩壊又は崩壊の危険性
  • ・法面の異常、変状
①現地被災状況等の把握及び報告 ②危険箇所の見回り
⇒法面の異常、変状及びその状況
雪害
  • ・雪崩の発生又は発生の危険性
  • ・豪雪、吹雪による交通障害
③雪崩発生危険箇所の点検
⇒積雪法面の異常、変状及びその状況
地震
  • ・地割れ、陥没
  • ・道路構造物の損傷
  • ・土砂崩落、路肩崩壊
  • ・法面の異常、変状
④危険箇所の点検
⇒法面、道路、構造物
風水害
  • ・出水、冠水
  • ・橋梁等の洗掘
  • ・法面の異常、変状
  • ・倒木、倒壊物等による交通障害
  • ・強風、越波等による交通障害
⑤特定箇所の見回り
⇒法面、道路、構造物


  1. ①各開発建設部との連携会議の開催
  2. ②関連する講習会、講演会、訓練などへの参加
  3. ③道路防災エキスパート講座の開催
  4. ④地域ボランティア活動への参加
  5. ⑤日常時からのコミュニケーションの構築

制度の設立経緯

平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災では、行政機関も甚大な被害を受け、職員自らも被災しました。そのため、初期段階における情報収集については、行政経験のある技術者などのボランティア活動が大いに役立ち、これを契機として、行政支援を趣旨とした「防災エキスパート制度」についての検討が開始されました。

平成8年度には、建設省(当時)の重点施策として、「防災エキスパート制度」が設立され、北海道開発局では平成9年1月に当センターを窓口として当該制度を自主的に設立しました。

また、平成15年の台風15号や十勝沖地震など大規模災害の経験から、北海道開発局 防災業務計画に「道路防災エキスパートの活用を図る」と明記され、平成17年1月、北海道開発局長通達「北海道開発局 道路防災エキスパート制度の要綱」が策定されました。

これに基づき、北海道開発局からの依頼を受け、当センターに「道路防災エキスパート事務局」を設立し、現在に至っています。

組織構成・登録人数と活動上の留意事項

災害時の迅速な対応が求められる道路防災エキスパートは、全道を9つの地区に分轄し、さらに札幌地区のみは10グループに分けた上で、居住地などを考慮してそのいずれかに所属する体制としています。

現在の登録人数は213名(令和5年3月 現在)で、近年、ほぼ横ばい傾向となっています。

道路防災エキスパートは、個人の自由意思で参加するボランティア活動です。報酬や費用の弁償はありませんが、その活動に際し、万が一に備えて当センターが傷害保険と賠償責任保険に加入しています。

また、道路防災エキスパートの活動には、所属企業等の理解が必要です。ご理解・ご協力のほどよろしくお願いします。

災害時の活動実績

平成9年から現在までの、災害等による出動実績は延べ15回となっています。

平成15年9月の十勝沖地震の発生時には、余震の続く中、管内の巡回を実施して関係部所より感謝の意をいただきました。

また、平成24年5月の国道230号 中山峠土砂災害、平成26年9月の国道453号 支笏豪雨災害では、開発建設部長より感謝状を贈呈いただきました。

最近5年間の出動実績

No 出動年月 災害名称、出動概要
1 令和元年 8月 国道229号 神恵内村字川白の落石対応に伴う出動要請で4名出動
2 令和 3年 4月 国道231号 石狩市浜益区送毛の盛土法面崩壊に伴う出動要請で4名出動
3 令和 3年 5月 国道275号 中頓別町天北峠の切土法面崩壊に伴う出動要請で2名出動
4 令和 4年 4月 国道334号 斜里郡斜里町ウトロ西 落石による通行止めに伴う出動要請で3名出動
5 令和 4年 9月 国道5号 小樽市張碓トンネル坑口での落石による山側車線通行止めで4名出動
6 令和 4年12月 国道333号 上川町中越地区における雪崩による通行止めで5名出動
7 令和 5年 2月 国道5号 共和町島付内で崩落雪に伴う出動要請で3名出動
8 令和 5年 3月 国道40号 音威子府村字筬島 岡穂内覆道上からの雪崩による通行止めで2名出動
  1. No.1国道229号 神恵内村字川白の落石対応に伴う出動要請で4名出動

    落石の現地視察を実施

    小樽開発建設部は、管内の一般国道229号古宇郡神恵内村大字珊内字川白で落石(1個)が発生したことにより、8月8日09:30~通行止規制を開始した。
    同建設部工務課からエキスパート事務局(札幌本部)に出動要請の電話連絡を受け、小樽地区道路防災エキスパート4名が出動し、現地にて路肩部の落石1個(直径約50㎝)を確認し、先行調査の道路事務所職員から落石の発生源とその軌跡などについて状況説明を受けた。現地での応急対策の確認とアドバイスなどを終え、岩内道路事務所および小樽開建本部にて、エキスパートによる支援内容等を報告し、その活動を終えた。

  2. No.2国道231号 石狩市浜益区送毛の盛土法面崩壊に伴う出動要請で4名出動

    盛土崩壊箇所の調査と確認

    札幌開発建設部は、令和3年4月19日10:30頃、一般国道231号石狩市浜益区送毛で盛土法面の崩壊が発生したこのにより、同日12:00~通行止規制を開始した。
    同建設部・滝川道路事務所から同事務所担当のエキスパート(グループリーダー)へ災害出動要請の電話連絡を受け、4名が出動した。現地では、ボーリング調査のコア(サンプリング)を確認し、盛土を構成している土質などの状況について説明を受けた。
    周辺の法面部には地すべりの兆候と思われる樹木の傾きや根曲がりが見られ、法面からの湧水・排水の有無など、二次災害の恐れが無いかに留意し状況を確認した。
    現地での視察を終え、、鋼矢板締切工による応急復旧工事が妥当と考えることや、排水処理の重要性などについて、アドバイスを行い、一連の支援活動を終えた。

  3. No.3国道275号 中頓別町天北峠の切土法面災害に伴う出動要請で2名出動

    切土のり面の災害の現地確認

    令和3年5月9日9:36頃、一般国道275号中頓別町天北峠で切土法面の崩壊が発生し、稚内開発建設部より、道路防災エキスパートの出動要請があった。
    隣地区との連携により旭川地区から2名の道路防災エキスパートが出動し、現地にてCCTV支柱・屋外無停電電源装置の傾倒の状況および雪崩予防柵(2基)が変状していることが確認できた。
    同開建・浜頓別道路事務所にて、検討会(テレビ会議)が実施され、「調査結果・推測される原因・当面の対応・今後の対応」などドクターによる所見説明があり、エキスパート2名がオブザーバーとして会議に同席した。

  4. No.4国道334号 斜里郡斜里町ウトロ西 落石による通行止めに伴う出動要請で3名出動

    落石対策の状況確認

    令和4年4月25日12:00頃、一般国道334号斜里町ウトロ西地区にて暖気による融雪が進行し、切土のり面部の斜面中腹から流水(融雪水)に伴う落石が発生した。
    翌日の4月26日、網走地区エキスパート3名が現地に到着し、現地調査や応急対策について意見交換・アドバイスを行い、網走開発建設部へ報告を行った。

  1. No.5国道5号 小樽市張碓トンネル坑口での落石による山側車線通行止めで4名出動

    落石状況の現地確認

    一般国道5号小樽市張碓町(張碓トンネル)において、落石(φ40cmの安山岩)が発生した。
    同日、小樽道路事務所所長より、小樽地区エキスパートの出動要請があり、メンバー4名が現場へ向かい、現場状況を確認し、その後、小樽道路事務所所長へ報告・意見交換が行われた。

  2. No.6国道333号 上川町中越地区における雪崩による通行止めで5名出動

    通行止め解除に向けた現地確認

    令和4年12月24日から25日にかけて、全道各地において強い冬型の気象条件により、道北道東を中心に通行止めが実施された。
    旭川開発建設部管内の一般国道333号・上川町中越~上越付近で雪崩(雪塊デブリ)が発生したことから、通行止めを実施した。
    その後、旭川地区の道路防災エキスパートの出動要請があり、2名が現場へ向かい、状況確認を行った。
    次の日にも、エキスパート2名が有識者と共に、現場の点検とパトロールを実施するなど、対応を行った。

  3. No.7国道5号 共和町島付内で崩落雪に伴う出動要請で3名出動

    崩落雪の状況確認

    令和5年2月27日、国道5号共和町島付内覆道付近で、法面に雪崩予防柵に堆雪した雪庇の崩落雪が発生した。現地は、登坂車線のある2車線道路であることから、片側交通規制を実施した。同日、小樽開建より、小樽地区エキスパートの出動要請があり、メンバー3名が現場へ赴いた。現場到着後、状況を確認し報告を行った。

  4. No.8国道40号 音威子府村字筬島 岡穂内覆道上からの雪崩による通行止めで2名出動

    雪崩の国道に対する影響の確認

    令和5年3月8日は、気温が0℃以上のプラスで推移した影響で、国道40号音威子府村字筬島の岡穂内覆道上方にて表層雪崩及び一部が発生した。同日、旭川開建より道路防災エキスパートの出動要請があった。それにより旭川地区から2名が、 現地へ派遣された。
    現地到着後、直ちに現状確認と調査を実施した。

平常時の活動実績

道路防災エキスパート連携会議の開催

札幌地区以外の全道8地区では開発建設部毎に、札幌地区では札幌開発建設部の5道路事務所毎の計13箇所において、「道路防災エキスパート連携会議」をそれぞれ1年に1回開催しています。

道路防災エキスパート連携会議の開催状況

道路防災エキスパート講習会や防災訓練等への参加

全道の道路防災エキスパートを対象に、有識者や行政の防災担当者などを講師として「道路防災エキスパート講習会」を1年に1回開催しています。

また、北海道開発局が各地で実施する防災訓練について、実際の災害発生時における支援活動を想定し、道路防災エキスパートも積極的に参加しています。

道路防災エキスパート講習会の開催状況(札幌市内)

車両移動訓練、啓開訓練への参加

道路防災エキスパート講座の開催

道路防災エキスパートが有する豊富な経験とノウハウを次世代に伝える(技術の伝承)ため、各地域で「道路防災エキスパート講座」を開催しています。

道路防災エキスパート講座は、下表のとおり2つの開催形式に大別され、そのいずれか、あるいは両方を併用する等、柔軟な運用としながら、随時、見直しを図ってゆく方針です。

道路防災エキスパート講座の開催形式
▼講習会形式
講師(道路防災エキスパート)が特定のテーマ(自身の失敗例・成功例 等)について講演。
▼意見交換形式
講師(道路防災エキスパート)を数名の参加者が囲み、特定のテーマや自由な話題について討論。

道路防災エキスパート講座(意見交換形式)の開催状況(小樽道路)

道路防災エキスパートのロゴマーク

道路防災エキスパート(DIsaster Prevention Expert for Road)の頭文字
DIPER」とし、ボランティアとして道路を守るイメージを意匠としています。